私、ジョン・スタインベックが大大大好きでして!
代表的な作品は『怒りの葡萄』とか『ハツカネズミと人間』とか『エデンの東』とかですね。
写真家キャパと組んだロシア紀行もすごくお薦めです!
※ ジョン・スタインベック著、黒原敏行訳『怒りの葡萄〔新訳版〕(上・下)』早川書房、2014年
※ ジョン・スタインベック著、大浦暁生訳『ハツカネズミと人間』新潮社、1994年
※ ジョン・スタインベック著、土屋政雄訳『エデンの東〔新訳版〕(1〜4) 』早川書房、2008年
※ John Steinbeck, A Russian Journal with photographs by Robert Capa, Penguin Modern Classics, 2011.
スタインベックはモントレー郡のサリナスという町で生まれました。
せっかくカリフォルニアに来てるんだから、この機会に行かねばいつ行くんだ!ということで、モントレーとサリナスを回ってスタインベックの博物館や生家などを見てきました。
※ The National Steinbeck Center https://www.steinbeck.org
※ The Steinbeck House http://steinbeckhouse.com
モントレーからバスで約1時間、こぢんまりとしたサリナスの町
『エデンの東』は舞台がサリナスなんです。
それから、これもスタインベックの小説なんですが、『キャナリー・ロウ』の舞台はモントレーですね。
スタインベック自身もモントレーに住んでいた時期があったみたいです。
どちらの小説も映画になっています。
※ ジョン・スタインベック著、井上謙治訳『キャナリー・ロウ ―缶詰横町』福武書店、1989年
※ John Steinbeck, Cannery Row, Penguin Modern Classics, 2017.
※ 「エデンの東」(1955年)監督エリア・カザン、主演ジェームズ・ディーン
※「キャナリー・ロウ(邦題「吹きだまりの町」)」(1982年)監督デヴィッド・S・ウォード、主演ニック・ノルティ、デブラ・ウィンガー
サリナスにはモントレーからバスで行きました。
着いたときは感動しましたね。
子どもの頃から小説で親しんできたあの場所に自分は今いるんだ、と思って。
朝食のために入ったFirst Awakeningsというレストランのパンケーキがすさまじく美味でした。
※ First Awakenings https://firstawakenings.net
スタインベック・センターは、作品を多く読んでいるほど見応えがある展示でした。
日本からわざわざ来てくれたのねと、受付の方からスタインベックのポスターをいただきました(サンディエゴから来たんですと言うべきだったでしょうか)。
裁判所、郵便局、図書館、教会などを回りました。
ある教会の前で出会ったご婦人としばらく話をしたんですが、その方がスタインベックのお身内の方だったと後で知って驚きました。
翌日はモントレーの探索です。
モントレーの海沿いを長く延びる通りをキャナリー・ロウといいます。
もともとここはイワシの缶詰工場地帯だったんです。
canneryのcanは缶詰のcanですね。
今も工場の名残りがあるところもありますし、跡地の一角にはモントレー・ベイという水族館が建ってたりもします。
※ Monterey Bay Aquarium https://www.montereybayaquarium.org
ここキャナリー・ロウは、いろいろな映画のロケ地になってるんです。
「キャナリー・ロウ」の他にも、「恐怖のメロディ」や「熱い夜の疼き」など。
観た当時はモントレーで撮影されたとは知らなかったんですが、どれも好きな映画なのでちょっと嬉しいですね。
※「恐怖のメロディ」(1971年)監督・主演クリント・イーストウッド
※「熱い夜の疼き」(1952年)監督フリッツ・ラング、主演バーバラ・スタンウィック
スタインベックの生家はレストランとしても営業
キャナリー・ロウのスタインベック・プラザに立つ胸像を拝む
今はカフェやショップに改装されているモントレーの缶詰工場
シーフード・レストランや土産物ショップが並ぶモントレーのフィッシャーマンズ・ワーフからはホエール・ウォッチングにも出かけられる
緑豊かな美しい庭園をもつカーメル・ミッション・バジリカは18世紀にスペインの伝道師によって建てられた
モントレー半島の南側にある、カーメルという小さな町にも行きました。
ここは芸術家の町と言われています。
クリント・イーストウッドが市長を務めたこともあって、映画ファン、イーストウッドファンとしては、ここも当然行かないとです!
カーメルには信号がないんです。高い建物も、看板も、ネオンも。
静かで上品な町でした。
スペイン領時代の建物がそのまま保存されていたりします。
町の中心地から、カーメル・ミッション・バジリカという有名な教会まで歩きました。
ちょうどミサをやっているところでした。
スペイン様式の建物と庭園とが青空に映えて見事でした。
※ Carmel Mission Basilica https://carmelmission.org
サンディエゴからサンフランシスコにかけてのアメリカ西海岸
次の日はサンフランシスコに移動しました。
フェリーでアルカトラズ島を見に行きました。
ここには、かつてアルカトラズ連邦刑務所があったんですよね。
「アルカトラズからの脱出」という映画が好きです。
これもアルカトラズ刑務所が舞台の映画なんですが、「終身犯」もとてもいいです。
刑務所ものや脱出ものが好きなんです(笑)。
※ Alcatraz Island https://www.nps.gov/alca/index.htm
※「アルカトラズからの脱出」(1979年)監督ドン・シーゲル、主演クリント・イーストウッド
※ 「終身犯」(1962年)監督ジョン・フランケンハイマー、主演バート・ランカスター
ちなみに脱出系映画では、「穴」というフランス映画もいいですね!
原作者ジョゼ・ジョバンニは作家としても映画監督としても好きです。
※ 「穴」(1960年)監督ジャック・ベッケル
※ ジョゼ・ジョバンニ著、岡村孝一訳『穴』、早川書房、1970年
サンフランシスコにあるシティライツ・ブックストアという書店は、ビートニクの拠点と言われています。
ケルアックやバロウズといったビート・ジェネレーションの作家を愛読していたので、ここも憧れの場所でした。
シティライツ・ブックストアで3時間くらい本をブラウズして過ごしました。
近隣のビート・ミュージアムではビート・ジェネレーション関連の展示物を堪能しました。
※ ビートニク(beatnik)とは、1950〜60年代のアメリカで活発になった文学運動に関わったり影響を受けた世代の人々のことです。
※ ジャック・ケルアック著、青山南訳『オン・ザ・ロード』河出書房新社、2010年
※ ウィリアム・バロウズ著、鮎川信夫訳『裸のランチ』河出書房新社、2003年
※ City Lights Bookstore http://www.citylights.com
※ The Beat Museum https://www.kerouac.com
サンフランシスコの老舗書店シティ・ライツ・ブックストアはビート文学の聖地
書店横には「ジャック・ケルアック」と名付けられた通りが
独特な外観をもつ超高層建築のトランスアメリカ・ピラミッドと歴史的建造物コロンバスタワーはサンフランシスコのランドマーク
2010年にボストンに滞在していたときに、ケルアックの出生地であるローウェルという町に行ったことがあります。
マサチューセッツ大学ローウェル校で、その時期にちょうどケルアック・フェスティバルをやっていたんです。
※ The Jack Kerouac Literary Festival https://www.uml.edu/artsandideas/Documents/JK-LitFest-broch.pdf
今回は、シティライツ・ブックストアにしてもビート・ミュージアムにしても、ケルアックが一時期ですが拠点にしたサンフランシスコでケルアックの足跡をたどったわけで、ああこういうのを「聖地巡礼」というんだな、と得心がいきました、今。
スタインベックを訪ねてサリナスとモントレーを歩き回ったのも、完全に聖地巡礼ですね。
一度の渡米で留学と巡礼を兼ねることができて、あの年はとても充実した夏になりました。