Vol.17 法学徒の足どり 〜2018年春、本郷〜
Specialインタビュー Vol.1はこちら >
朗読ライブ「きのう何食べた?」
- 休学されていた期間、漫画「きのう何食べた?」を原作に、朗読の舞台をプロデュースされましたね。
佐々木さんが、企画制作、プロデュース、演出、主演を務められたという!
※よしながふみ『きのう何食べた?』(講談社)
- 佐々木(以下略) はい、この朗読ライブの準備もあって休学したんです。
休学中は、勉強は一年間すぱっと休んで、声の仕事と朗読ライブの制作に集中しました。
朗読ライブ「きのう何食べた?」(よしながふみ原作)で独創的な舞台朗読をプロデュース、主人公シロさんも演じる
- 舞台、私も拝見しましたが、大変面白かったです!
「朗読ライブ」というのは朗読劇とどう違うのかと思っていたのですが、映像と音楽をふんだんに使って、ライブ感満載のステージになっていましたよね。
満員のお客様も大興奮でした!
- ありがとうございます!
よしなが先生の原作が大好きで、拝読していて朗読ライブ化へのイメージがすごく湧いてきたんです。
原作を絶対に損ねないように気を配りながら、ステージとしてやってみたいアイディアをたくさん詰め込みました。
- 舞台の映像で料理シーンがたくさん登場しましたが、実際に料理を原作に忠実に作られたと伺いました。
それを全部撮影・編集されたのですから、準備段階からものすごく手間がかかった作りですよね。
- 料理は私が作ったわけじゃないですけどね(笑)。
撮影は一日がかりでしたけど、とても楽しかったです。
作った料理は、ごはんやおやつとして、撮影隊みんなでいただきました。
おいしかったですよ!
- (ここでスタッフが発言)脚本にも音楽にも映像にも、佐々木さんは最初から明確なビジョンを持っていらして、さらに舞台や演出上のアイディアや工夫もたくさん持っていらして、やりたいことがはっきり見えていらした感じですよね。
それをプロデューサーとしてまとめ上げていかれたのですから、本当にお忙しかったと思います。
- 初めての舞台プロデュースでしたけど、本当にいろいろな方にお力を貸していただいて、できあがりました。
ご覧になったお客様からもものすごく好評をいただいて、プロデューサーとしては本当に安心しましたし、出演者としても本当に嬉しかったです。
- そしてもちろんの主演ですね!
佐々木さんが演じられた主役のシロさん(筧史朗)は、実は弁護士という設定なんですよね?
- そうなんです!
シロさんが弁護士というところが嬉しくて。
まあ、私は法学部生なだけで弁護士ではないんですけどね。
でも、セリフの意味も、シロさんの感情も、自分にはすごくわかる気がしてました、勝手に(笑)。
- その公演のときに、佐々木さんはまさに現役の東大生で、しかも法学部だったんですよね。すごいですよね!
- 当時、プロデュース公演への意気込みやシロさんという役柄について語ったことがありましたけど、東大に行っていることはまだ公表してなかったんですよね。
自分もシロさんのように法律学んでます、だからシロさんと気持ち的にもすごくシンクロしてます、みたいに、あのとき本当は言いたかったですけどね(笑)。
- やはりご本人と役とで共通点があると、演じやすいとか役作りしやすい、というものなのですか?
- それはあると思います。
共通する部分があるということは、その人物の背景とか使う言葉の意味が、よりわかっているということなので、演技者として当事者性とか説得性を作り出しやすいでしょうね。
かといって、じゃあ自分とまったく違うタイプの人物だと演じにくいかというと、そうでもないんです。
- そうなんですか?!
- 自分はそうですね。
最初は共通点がぜんぜん見つけられないというときもありますけど、その場合は想像力を使って楽しんで役作りできますし、似てないから演じにくいというわけじゃないんです。
役作りや演じる過程で理解が深まっていくにつれて、何か自分と重なる部分を発見することも多いですしね。
それに、どんなに共通点がないように思えても、演じてしまえば、少なくとも「声」は共通点になりますね!(笑)
- なるほど! 声はそうですね(笑)。
- シロさんの場合は、性格も似てる気がするので、最初からとても近しく感じていました。
本番でも自然に演じられたかなと思います。
プロデューサーとしては、初めての経験だったので制作作業は大変でしたけど、それまでわかっていなかったスタッフさんのご苦労とか、ひとつのステージを作っていく大変さとかを知って、本当に勉強になりました。
- 初めてのプロデュースとは思えないくらい素晴らしい公演でした。
刺激になったと絶賛される業界関係者の方もたくさんいらっしゃったそうですね。
またぜひ、朗読ライブをやってください!
佐々木さんの制作される舞台を楽しみにしております!
続きを読む
成績優秀者表彰制度
- 充実の休学でしたね。
そして一年ぶりに復学されますが、不安とか期待とか準備されたこととか、何かありましたか?
- 復学するにあたって、卒業までにあと何の科目を何単位取らないといけないのか確認しようと思って、法学部の便覧を眺めてたんですね。
すると、その中に書いてあった「法学部成績優秀者表彰規則」というものが目に留まったんです。
- 成績優秀者というのは法学部の中での、ということですか?
- そうですね、これは法学部が認定する、法学部生の中での成績優秀者制度です。
東大は成績に席次(順位)を付けないので、いわゆる「首席」という制度や概念はないんですけど、その代わり成績優秀者制度があるんです。
- 佐々木さんが表彰してもらえたというのは、このことだったんですね!
- そうですそうです。卒業証書と一緒に、成績優秀者の表彰状をいただきました!
まあ、それだけなんですけどね(笑)。
※1899年から1918年は、東京帝国大学の優等卒業生に銀時計を授与されていたそうです。
東京帝国大学の時代に優等卒業生に授与されていた「恩賜の銀時計」(東京大学文書館収蔵)
- 成績優秀者になれるかも、と思われたのは、この時期なんですね?
- そう、2回目の4年生になる春学期、復学の直前です。
便覧に条件が詳しく書いてあって、よく読んでみたんですけど、これまで自分がとった単位と成績からすると、どうも条件達成が不可能ではないんじゃないか、ということがわかりました。
- なるほど! 伺っていると、それまでかなり良い成績を取られていましたものね。
- 成績優秀者制度があることは前になんとなく聞いたことがあったんですけど、法学部に来た頃は全然勉強がわからなくて卒業できるかどうかすら心配なくらいだったので、自分には関係のないものだと思ってました。
でも、ここに来て、「あれ? もしかしてもしかしたらいけるかも?」みたいに気づいて。
- そこをひとつの目標にされたんですね?
- いえいえ、目標にするとそれはそれでものすごくプレッシャーになるので、私自滅してしまいます(笑)。
でも、無理せずにひっそりと、ちょっとだけ狙ってみようかと思いました。
ダメもとで。
勉強は成績がすべてではないですけど、でも、勉強の張り合い的な意味では、成績優秀者認定をうっすら頭に入れているのがいいかなと思ったんです。結果はどうなったとしても。
- もうそれまで十分に良い成績を取られているのに、そこで変な話、どれくらい勉強すればどれくらいの成績が取れるかの加減がだいたいわかったから、単位もらえればいいや、ちょっと手を抜いていいや、みたいなところに行かないところが、やっぱりすごいです。
向上心が高いというか、いつも高みを目指されているというか。
-
自分で選んで入った大学で、自分の意思で時間を使って勉強するわけですからね。
それなのに手を抜いて単位だけを、というのは私の場合は矛盾しますしね。
勉強するならできる限りのことをしたいと思ってました。
それで、規則によると、成績優秀者の認定を受けるための前提条件になっている単位を、私はまだ取れていないことがわかりました。
それまでは、卒業要件をクリアすることだけを考えて履修計画を立ててきたんですけど、それだけだと成績優秀者の要件を満たさないんです。
ちょっとこの辺は複雑なので、詳しい説明ははしょりますが……。
要するに、私の場合は、卒業要件の90単位よりも多く、トータルで102単位以上が必要になったんです。
- さらに12単位分の負荷が増えたんですね……。
-
そうなんです。予定していたよりも、あと数科目取らないといけなくなりました。
それも、成績優秀者の要件を満たすカテゴリの科目を、要件を満たす単位数で。
このカテゴリ別の単位数の計算がけっこう面倒でしたけど、それからは新学期が始まるたびに規則を再確認して、間違いのないように、必要な科目と単位を揃えていきました。
それもまた、楽しい道程でしたけどね。
- 勉強だけでなく、そんな計算まで……(笑)。
本当に緻密ですね(笑)。
続きを読む
「優上」ってどうなのか
- 復学されて、2回目の4年生として夏学期を迎えられました。
久々に通学して大変だったとかはありましたか?
- 特に問題なくスムーズに大学に戻れました。
この学期は、必修科目は行政法第1部、選択科目は刑法第2部と租税法を受けました。
中里実先生の租税法は、2年前に続いて2回目の受講でした。
2年前は聴講だけさせていただいて試験は受けなかったんですけど、今回やっと試験を受けました。
中里先生は法学部に来るきっかけをくださった先生なので、私としては先生の授業にやっぱり特別な思いがあって、受講も試験も頑張りました。
※インタビューVol.3参照
- 試験結果はいかがでしたか?
-
勉強がうまくできたみたいで、結果もついてきた感じです。
3科目ともすごくありがたい評価をいただきました。
(2回目の)4年生夏学期までの成果を見たい方はコチラ
最近、ラテン語の学習も始めた
- さすがです。もう本当に勉強のやり方が身についていらっしゃったのですね。
ほとんど優ばかりなのでは?
- 成績評価方法が、私が法学部に入った頃に若干変わって、「優」のさらに上に「優上」が加わったんです。
でも、先生が「優上」と「優」を出せる割合には上限があって、その2つを合わせて上位何割の学生までしか与えられないんです。
- それは相対評価なんですね?
-
そうなりますね。
いくら優秀な人がたくさんいても、みんな優以上がもらえるわけではないということです。
この「優上」ってどうなのかって個人的には思ってました。
「優」はただ「優」でいいじゃんって。
その上に「優上」なんて作られてしまうと、「優」をいただいたときの嬉しさがけっこう損われませんか?(笑)
なんだ、ちぇっ「優上」じゃないのかって(笑)
頑張って勉強して「優」を取れたとしても、「よく頑張ったね、優をあげよう。ちなみに優上ってのがあるんだけど、きみは優ね」ということになるのかなって。
ずいぶんひどいじゃないかと(笑)。
- たしかにそうですね。「優」のありがたみがちょっと減る感じが(笑)。
- 入学してからも競争なのか、と思ってしまうかもしれないですよね。
でもたぶん、競争といっても人との競争ではなくて、自分をより高める、という趣旨で作られた成績評価システムなんでしょうかね。
人と競うのは苦手なので、精神衛生上、そう思うようにしてました(笑)。
- 声優業界も厳しい競争世界のように見えますけど、本当は人との競争でなくて、自分をいかにして高めるかということが大切なんでしょうね。
いま伺って、そう思いました。
佐々木さんはきっと、そうされてきたんですね。
次回は、勉強ますます充実期? 2度目の4年生、冬学期から! 8月11日(火)頃更新予定。