Vol.3 駒場を満喫し尽くそう! 〜スペ語と友と進振りと〜
スペイン語に浸かる日々
- では、1年生の冬学期のことを聞かせてください。そろそろ大学に慣れてきた頃ですか?
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佐々木(以下略) そうですね。1年の夏学期は授業がびっしりでしたけど、冬学期は半分くらいに減ったし、キャンパスで過ごすことにも慣れて、授業にも気持ちにも余裕ができました。
- 授業はどんな感じだったんですか? 新しい科目も取られましたか?
- 人文系では必修の「法II」と「政治II」に加えて、興味があった「心理II」というのを取りました。
それから、選択だけど必要な科目として「海洋生物の生命科学」というのも取りました。 - 海洋生物の? 面白そうですね! 理系っぽいですけど、どうして選ばれたんでしょうか?
- 文科の学生でも、理系の科目を一定数取ることを課されてるんです。
駒場の2年間を前期課程というんですが、前期課程を終えるには文系は70単位以上取る必要があって、その中に理系分野が含まれていないといけないんです。
選べる理系科目はたくさんありましたけど、これは特に興味を惹かれたので。 - なるほど。本当に文理横断的なシステムなんですね。面白かったですか?
- 面白かったですよ! これもオムニバス形式の授業で、先生も内容も毎回違うんです。試験はなくて出席と期末レポートで単位をいただけるので、いくぶん気楽に楽しく受講してました。
レポートはゲノム解析について書きました。 - うわあ、本当に思いっきり理系ですね! そんなことまでお詳しいんですか?
- いえ、ぜんぜん詳しいとかじゃないんです。だから理系的なことは書けなくて人文チックなレポートになりました。ゲノム解析と社会との関わり、みたいな。
- それもぜひ読んでみたいです! 語学の授業も引き続きあったんですよね?
- 語学は、必修に加えて選択科目でスペイン語ふたつと英語のディベートを取ったので、週に8コマ語学の授業を受けてました。
- 8コマ! 語学マスターですね!
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空きコマがあるとどんどん入れてしまう癖があるみたいです(笑)。
1年生の夏学期が終わって、夏休みにヨーロッパ旅行をしたんですが、その帰りの飛行機でスペイン語の勉強をしていたら、CA(客室乗務員)さんに声をかけられたんです。その方はスペイン語が話せるみたいで。
それで、スペイン語で会話をしてみたらわりと通じたりして。
それが嬉しかったので、スペイン語をさらに頑張ろうと思いました。 - すすすすごいです! きっと声優さんだから発音とかも上達が早いんでしょうね!
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声優だからかは分かりませんけど(笑)。耳コピはわりとできる方かもしれないですね。
で、冬学期が始まると、張り切って「スペイン語会話」と「スペイン語作文」を取ったんです。「スペイン語会話」の授業は10人くらいで、半数は留学生の方だったので、こっちも留学しているような楽しい気分になりました。アットホームな雰囲気のクラスで、ネイティブ・スピーカーの先生が母親のように教えてくださって。
クリスマス時期にはトルティーヤやパン菓子を焼いてくださって、みんなで食べました。
授業中ですけど、それもスペイン文化の勉強ってことで(笑)。 - うわー、すてきですね! 外国語を学ぶのはその国の文化も学ぶということですものね!
- 食べてばっかりじゃなくて会話の力もちゃんとつきましたよ!(笑) 先生が絶対に日本語を解さないふりをするので、みんなスペイン語を話すしかないんです。
- ふりをする?
- 絶対に日本語わかってらっしゃるし、おそらく日本語話せるんです、先生(笑)。
- それはいい先生ですね! きっと力がつきますよね!
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ええ、けっこう会話に慣れました。
で、ですね。もうひとつの「スペイン語作文」がすごい経験でして……。
- ど、どうしました?
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選択科目っていうのは、だいたい最初の授業はガイダンスというか、おためしというか、どんな授業なのか先生が説明してくださって、それを聞いて受講するかどうか決めるというものが多いんです。
受講しようとは思ってましたけど、一応それでも様子を見てから決めようと思って、初回にとりあえず教室に行きました。
まだ他の学生は来てなかったので、ちょっと早かったかなと思いながら座ってました。 - ふんふん。それで?
- 授業の時間が5分くらい過ぎても誰も来なくて、あれ、教室を間違えたのかなと思って立ち上がろうとしたら先生が入っていらっしゃいました。だからもう外に出られなくなってしまって。
- え? 他の学生さんは?
- 結局ひとりも来なかったんです(笑)。で、そのまま授業が始まりました(笑)。
- えっっ、生徒が佐々木さんひとりだけってことですか? 先生と一対一で?
- そうなんです。いや、それでも初回たまたま来られなかっただけで翌週には誰か来るのかもと思ってたんですけど、最終回まで本当に誰ひとり来ませんでした(笑)。
ネイティブ・スピーカーの先生と、1学期間まさかのマンツーマン教室ですよ(笑)。 - ……。すごくぜいたくな授業です。
- いや、そうなんですけどね。まったくぜいたくな話なんですけど、でも心の準備が(笑)。
だって、授業時間90分で、たとえば受講者が普通に10人いたら、先生がひとり当たりに割ける時間は多くても7、8分ですよね?
でも受講者ひとりだと、90分まるまる先生と全力でやり取りしないといけない(笑)。
きゅうじゅっぷん、ですよ!(笑) - すごい圧がかかりそうですよね?(笑)
- 一点集中で自分に圧が(笑)。そして、マンツーマンだから欠席できません。先生も学生もどちらも(笑)。お互い連絡先も分からないですからね。絶対に休めないというプレッシャー(笑)。
- もし佐々木さんも初回に行ってらっしゃらなかったらどうなったんでしょうか?
- 受講者がひとりもいなければその科目は開講されないことになりますよね。
もし先生がお休みされたかったんなら申し訳なかったですけどね。下手に私が来たばかりに。 - いや、先生は嬉しかったと思いますよ。しかもそんなに熱心な生徒さんが。
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いやあ、熱心にやるしかないじゃないですか、なんせひとりなんですから(笑)。
プレッシャーも授業中だけじゃなかったんです。作文の授業なので当然、毎回作文を書いていかないといけなくて。90分の授業が保つくらいのスペイン語作文をですよ! その量たるや(笑)。
- 作文ってなにを書くんですか? テーマが出るんですか?
- 特にテーマを決められてはなかったです。ひとりなので、「何でも書いておいで。見てあげるよ!」という感じでした。
何でも書いていいといっても、自分のスペ語の能力との兼ね合いなので書きたいことを十分に書けるわけでもなかったりして、日記みたいな内容にしても、世の中で話題になっているトピックについて書くにしても、毎回なかなか時間がかかりました。 - なるほど、それは大変でしたね。
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だから、冬学期はずっとずっとスペイン語の作文を書いてました。書きまくってました。空き時間ができるとスペイン語作文を。寝ても覚めてもスペイン語作文を(笑)。
たくさん書きためておかないと、次の授業で見てもらう分量に追いつかないんです。余力があるからと取った選択科目のはずが、一番重い科目になってしまいました(笑)。
でも、とにかく大量に書きまくったのと、先生が全部丁寧に添削してくださったので、すごく力がつきました。 - 東大でマンツーマンの授業を受けられるなんて、すごくラッキーでしたね!
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そうですよね、最初はどうなることかと思いましたけど(笑)。
その先生には、学外で開催されたスペイン法についての講義に誘っていただいたこともありました。内容は難しくて分からないことも多かったですけど。
いろいろな学問の世界があることを知って、大学生でいられることをあらためて嬉しく思いました。
- 学問の醍醐味ですね。
- だけど、こんなに時間をかけたスペイン語なのに、本郷に行ってからは全然やれてなくて、だいぶ忘れてしまいました。
作文の授業のおかげで、かなり書けるようになってたんですけどね。 - ああ、もったいないですね。
- (ここでスタッフが発言)佐々木さん、プロフィールに「特技:スペイン語」って書いてありますよ?(笑)
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そ、そうでしたね。はい、またやり直します(笑)。
でも、そんなにスペイン語を勉強してたんですが、スペインにはまだ一度も行ったことがないんです。いつか行きたいんですよね。
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