Vol.11 法学徒の自覚 〜2016年春、本郷〜
まだまだ映画と文学と
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3年生の冬学期は、憲法第1部、政治学、ロシア・旧ソ連法、高齢者法、憲法演習で単位を取られて、しかも全部優以上というお見事な成績を修められました!
3年生冬学期までの成果を見たい方はコチラ
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佐々木(以下略) 少し安心しましたね。マイペースで勉強しても良い評価をいただくことは可能なんだとわかって。
3年生が終わった春休みは、山口県の香月泰男美術館に行ったり、英語教育の講演会を聴きに行ったり、映画を観まくったりしてました。
※香月泰男についてはインタビューVol.7参照 - 英語教育の講演会というのは? 英語の教育方法ということでしょうか?
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そうですね。わが国の義務教育課程でどういう教育方法が望ましいのか、現役の英語の先生方のご意見を伺うみたいな。
子どもたちへの教育という一般的な意味だけでなくて、英語学習者である自分自身にとっても、国内のこれからの英語教育の動向に関心があるんです。 -
それは、法学を学んでいらっしゃる東大生の佐々木さんとはまた別の一面ですね。
本当にご関心の幅が広いというか……。
大学が春休み中はいったん法律から離れて他の分野を、のように切り替えみたいなことを考えていらっしゃいましたか? -
そこまできっちり切り替えしてたわけじゃないんですけどね。
でも、たしかに学期中は履修科目以外の分野にはなかなか手が回らなかったので、英語関係のことは休み中にしか勉強できなかったかもしれません。法学もずっと気になっていたので、休み中でも離れてはなかったです。
大学の勉強ではないですけど、法学系の本を読んだりしてました。英米法関連とか。
学外の、アメリカ政治についての講演会にも参加したりしてました。 -
お休み中であっても変わらずに、学ぶことについて積極的に行動していらっしゃったのですね。
でも、お休み中といっても、お仕事はお休みされていないわけですから、授業があってもなくてもお忙しいのは変わらないですよね。 -
そうですね、本当は「休み中」って言うのはおかしいんですけどね。
でも、すっかり大学生である自分になじんできていて、一年のとらえ方も、春からのターム→休みじゃないですけど夏休み→秋からのターム→年末年始と試験期間→休みじゃないですけど春休み、みたいになってきてたかもしれません(笑)。 -
東大では、春からのタームが夏学期、秋からのタームが冬学期ということですよね。
さて、4年生になられて夏学期が始まりましたが、どんな科目を取られましたか? - この学期は、必修科目は憲法第2部と民法第2部、選択科目で民法第4部、経済法のゼミ、それと文学部の「近代文学特殊講義」を履修しました。
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法学部の科目が4つ、またどれも重厚そうですね。
文学部の「近代文学特殊講義」は以前も取られていらしたような? 違う科目なのでしょうか? -
ええ、同じ科目名でも担当の先生と内容が違うんです。
この年はロシア中東欧の映画と文学が題材で、複数の先生がご専門の地域に応じてリレー式に担当されました。 - 映画と文学なんて、まさに佐々木さん向けの授業ですね!
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ですよね!
毎年春休みの間に4月からのシラバスが大学から発表されるんですが、文学部のシラバスも必ずチェックして、「これは!」と思うものをのぞきに行ってました(笑)。
この授業では、ロシアや中東欧の映画をまずみんなで鑑賞して、その後に先生がその社会の歴史や文化といった背景的な事情を解説してくださるというものでした。
ときには、その国からいらした研究者や作家の先生の講演もありました。 - どんな映画をご覧になったのですか?
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ソ連の最初のトーキー映画「人生案内」(ニコライ・エック監督、1931年)や、マケドニアを舞台にした「ビフォア・ザ・レイン」(ミルチョ・マンチェフスキ監督、1994年)や、セルビア映画の「我々は世界チャンピオンになる」(ダルコ・バイッチ監督、2015年)、などです。
他にチェコやポーランドの映画も観ました。中には日本語版がないものもあったので、そういう作品は英語字幕を目で追いながら内容を把握しないといけなくて、けっこう大変でした。
そもそもが授業中に映画が観られるという浅い動機から受講を決めたんですけどね(笑)。
でも、観た映画についての考察を毎回レポートにして提出しないといけなかったので、英語字幕でも真剣に観ないと、後でレポートを書くときに困るんですよね。 - 毎回レポートですか! それは大変ですね。
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映画を観るためにまとまった授業時間が必要だったので、2コマ分連続の隔週での授業だったんですけどね。
それでも、全部で6本レポートを書きました。英語の小説の購読の授業でレポートを書いたときも思ったんですけど、映画でも同じで、何かを観てそれについて自分の考えたことを言葉にして一定量書く、というのは本当に難しいことですよね。
感想のようなものをつらつら書くのではなくて、何かを具体的に描写したり、自分の考察を人が理解できるように論理的な構造で文章化することは、本当に訓練しないとできないことだとまた思いました。その訓練を、自分は教育課程で受けてきてなかったんだなと。
- それはありますよね。ほとんどの人は、小学生のときに読書感想文を書かされたと思いますけど、論理的な文章の書き方というのはきちんと習ったことがないような……。
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おそらく多くの人はそうなんですよね。
でも、大学ではレポートの書き方から教えてもらえるわけではなくて、レポートを適切な書き方で書けることはまあ前提になっているので、自分の能力的な位置と学生として求められている位置とにギャップを感じることがありました。法学部の勉強でも同じようなことを感じました。
たとえば、法律科目の試験では、「法的三段論法に則った答案」というものが求められるんですけど、そのような法律答案の書き方自体は、大学の講義では教えてもらえないんですよね。
講義で書き方は教えられないけど、講義が終わった後の試験ではその形式で書くことを求められるという。
なんかおかしくないか、どうしてそこにギャップがあるんだろうって、法学部に入ってからしばらくは不思議に思ってました。 - 文学部のレポートの書き方もそうですけど、法学部にいらっしゃるので、法律の答案の書き方を教わってなくて書けないというのは、一番切実だったのでは……?
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そうなんです。そこに、けっこう長い間引っかかってましたね。
それもあって、法学部に入って最初のうちは、試験もずっと受け控えてしまうことになりました。とはいっても、どうしてだろうなんて言ってても仕方がなくて、結局は自分でなんとかするしかないので、なんやかんや試し続けて、徐々に法律の答案をまがりなりにも書けるようになっていったんですけどね。
だから、大学って、ただ講義を受けて決まった課題をこなしていくだけじゃなくて、それをしながら同時に、勉強する身分としてそのときそのときの自分に足りない能力に自分で気がついて、それを自分で身につけてというふうに、常に自分で補完し続けながら学ぶところなんですね、きっと。
そういうことも含めて、大学に行く面白さがあったと思います。
- そうですね、すごくよくわかります。主体的な学び、大学に行く真髄ですね。
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このロシア中東欧の映画と文学を履修したことをきっかけに、何回か文学部の研究室にもお邪魔して、映画のDVDをお借りしたりもしました。
自分で入手できる映画は自分で手配できますけど、昔のものや日本でDVD化されてないものが研究室には揃ってるんですよね。
授業に関係なくて、ただ個人的興味で観たい映画でも、こころよく貸していただいてありがたかったです。 -
それは便利な! 学生さんであることをフル活用されていますね(笑)。
個人的な興味とおっしゃいますけど、それもまた、主体的に学ぶということですよね! -
他学部生なのに、ずうずうしく行ってました。
大人は、なろうと思えばある程度ずうずうしくなれますね(笑)。この学期中には、作家のスティーヴン・ミルハウザーさんと柴田元幸先生の朗読会が学内でありました。
DVDを返しに文学部の研究棟に入ったら、ちょうどミルハウザーさんと柴田先生が出ていらしたところに遭遇したんです。
そのときに、今度イベントがあるよとおっしゃっていただいたので、「行きます行きます!」って(笑)。
※集英社高度教養寄付講座 第5回講演会 「スティーヴン・ミルハウザー朗読会」 - 作家さんと翻訳家さんの朗読会なんですね。
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ミルハウザーさんが原文を読まれて、それから柴田先生が翻訳を朗読されるんです。
原作者と翻訳家との対話という意味でも興味をもって拝聴できた講座でしたけど、それ以上に、これは朗読の新しい試みだなと思って、声優としてすごく刺激を受けました。
翻訳者が、翻訳した文章を自ら朗読するというのが新しいなって。 - 佐々木さんもオーディオブックの朗読をいろいろとされてますものね。 柴田さんと佐々木さんの「師弟ジョイント朗読会」なんかも、あったら面白いですね!
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佐々木望が朗読するオーディオブックはコチラ
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