イメージの「東大生」と実際の東大生
- 東大を卒業されて、あらためて、東大生のイメージは変わりましたか?
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そうですね……。
東大に入る前は、特に東大生のイメージを持ってたわけではないんですけど。
実際に自分自身が東大生になって周りの人を見ると、東大生のイメージとして一般的になんとなくできあがってるようなイメージとはずいぶん違うなと感じました。勉強が好きで勉強ができる人たち、という意味では世間的なイメージに即しているかもしれないですけど、勉強ばっかりで視野が狭かったり余裕がなかったりするイメージではまったくないんです。
基本的には普段からいろいろなことに興味を持っていて、学校の勉強や目の前の試験に関係ないことだったとしても、知的に刺激されるものに対してはどんどん自分で調べていく意欲があるというか、能力があるというか、その力があるというか。
根本に知的好奇心があるんですよね、きっと。 - 「東大生=ガリ勉」というステレオタイプのイメージとは全然違ってたんですね。
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いわゆるガリ勉的なタイプの人はほとんど見かけなかったような……。
皆さんいろんなことをやってらっしゃいました。
サッカーやテニスや格闘技などのスポーツや、ピアノやバイオリンやチェロなどの音楽や、将棋や囲碁やチェスや、小説や絵や漫画やダンスやマジック、株とかFXとかも。そもそも地理が好きでいろんなところに旅してるとか、そもそも化石とか古代生物が大好きで現地調査に出かけてるとか、料理がシェフ並みに達者だとか、世界の鉄道なんでも博士みたいな人とか、温泉博士? 温泉のことならなんでも聞いて、なんなら湯の成分の違いとかも聞いて、みたいな人とかも(笑)。
- もちろん、その方は実際にその各地の温泉に行ったことがあるんですよね?
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もちろん、行ったうえでの温泉博士ですよね(笑)。
他には、ヨーロッパをバックパックひとつで周ったり、単身でサンティアゴ巡礼をしたり、モンゴルでパオ(テント)に泊まってきたり、被災地でボランティアをしたりも……。
私が出会った東大生の多くは、勉強以外に打ち込めるものや特技をいくつも持ってる人たちで、そういった分野で大学の内外で表彰されたりする方もいらっしゃいました。勉強に打ち込めるのももちろんすごいことなんですけどね。
勉強ができるうえに、視野が勉強だけに限られてないというか。
もっともっと自由な人たち、枠の中にはまり込んでなくて、自由に考えて自由に学んで自由に選んで自由に取り入れて……っていう人たちに思えます。大学というものは実務家やビジネスパーソンの養成機関だ、という意見を聞いたことがありますが、少なくとも東大の場合は、立場上も実質もそうではないように思うんです。
東大生の中には在学中に起業する方もいらっしゃいますけど、その方たち含めて、皆さん広い意味での「学ぶ・知る」ということに純粋に貪欲な面があると感じます。 - 学びたい、知りたいという気持ちを自然にもっている方々なんですね、東大生の皆さんは。
- 私が知り合えた東大生は東大生全体のごくごく一部の方ですから、ここで私が「東大生とはこんな人」みたいにまとめて語ることはもちろんできないですけどね。
本当にいろいろな方がいらっしゃるので。
だから、実際は、よく言われているような「東大生の類型」なんてないし、皆さんそれぞれ独自の生き方を選んでいらっしゃると思います。

仕事の打ち合わせの合間に法律をカフェ勉





1892年の創設から約130年の歴史をもつ東京大学総合図書館の中の様子は夏目漱石『三四郎』にも描かれている
所属学部を超えた履修ができる制度を活用して薬学部の講義「薬事法」も受けてみた(写真は薬学図書館)
普段の学習用にもレポートの資料用にも、大量の文献を読み、調べ、借り出しに日参した法学部研究室図書室
300万点を超える学術標本を所蔵し、最先端の研究成果を一般にも公開している東京大学総合研究博物館(2020年11月現在休館中)

本郷通り沿い、宮沢賢治『注文の多い料理店』にちなんだ店名をもつ「山猫軒」はレトロな雰囲気の落ち着いたレストラン(2020年2月閉店)
正門向かいに位置する昭和27年開業の「ルオー」は、多くの文学作品にも登場し、東大関係者に愛されてきた老舗喫茶店
水泳部(1884年創設)、陸上運動部(1886年)、漕艇部(1886年)、剣道部(1887年)、柔道部(1887年)、弓術部(1891年)をはじめとして、東大運動部には歴史と伝統のある部が多い
毎年5月に開催される「五月祭」は、学園祭ならではの華やかさと研究発表の場としてのアカデミックな内容の両面を楽しめる東大らしいフェスティバル(2020年は9月にオンラインで開催)
毎年10月開催「東京大学ホームカミングデイ」は、講演会、音楽祭、模擬授業、学年会(学部を超えた同窓会)、キャンパス見学ツアー、模擬店、利き酒会など内容豊富(2020年はオンライン開催)
東大教員が自らの専門分野の魅力を語る「高校生と大学生のための金曜特別講座」(東京大学教養学部開講)には全国の高校生たちがリアルタイムで参加し、教員に直接質問もできる