佐々木望の東大Days

東大Days公開記念! 佐々木望 Specialインタビュー

2013年に東京大学を受験し合格、この春(2020年)法学部を卒業した声優・佐々木望。
魅惑的なボイスで数々のキャラクターを演じ、人気と実力をあわせ持つ声優としてそのキャリアを重ねてきた彼が、仕事をしながら東大に入学し卒業したという発表は、私たちを心底驚かせた。しかも文系トップとされる東大法学部である。
いったいなぜ? どうやって? 何のために? 聞きたいことは山ほど浮かんでくる。
「東大Days ―声優・佐々木望が東京大学で学んだ日々―」公開記念のこの独占インタビューでは、受験から入学、キャンパスライフ、勉強のことなど、東大生としての日々を佐々木さんに伺ってみる。

インタビュアー:漫画編集者 永田裕紀子(小学館)

こんにちは。佐々木望です。
いつも東大Daysを読んでくださってありがとうございます!

先日、東京スカイツリーから配信したオンラインチャリティー番組に出演しました。

番組アーカイブはこちらです。
ぜひご覧ください!

葛飾北斎生誕260周年記念事業
ワールド北斎アワード
「M.A.G-NET ONLINE チャリティーFES..@東京スカイツリータウン®」
https://www.hokusai-award.com

ロンドン滞在記 〜 1日目 〜

ホテルから15分ほど歩いてコヴェント・ガーデンに行き、イギリスの演劇やオペラの歴史をたどるロンドン演劇博物館で衣装や小道具などの展示品を見ます。
しぶい館です。舞台装置の模型などもありました。

そこからまた少し歩いて、フリーメイソン図書館と博物館、さらにイングランド王立外科医師会を見学します。

法学生として、医学にふれた後は法学にふれなければ。
10分ほど歩くと、ストランド通りに王立裁判所があります。イングランドとウェールズの最高裁判所です。
見学と裁判の傍聴をしてみます。

王立裁判所の近くにあるセント・クレメント・デーンズ教会に入ります。
教会の名前に何か聞き覚えがあるように思えて、しかも親近感がわくように思えて、なぜだろうとずっと引っかかっていたのですが、中を見学しているときにハッと気づきました。
子どもの頃に覚えるほど何度も読んでいた『メアリー・ポピンズ』シリーズの中に、「オレンジとレモン、と、聖クレメントの鐘がいいました」というフレーズが出てくるのですが、これがこのセント・クレメントのことだったのです。
40年以上たってもまだ覚えているフレーズです。
教会の中にいるときにその意味がわかったことに感動しました。
※P. L. トラヴァース著、メアリー・シェパード(イラスト)、林容吉(訳)『とびらをあけるメアリー・ポピンズ』岩波書店、1964年

それにしても林容吉さんの翻訳はすばらしい。
トラヴァースさんの原書、シェパードさんの絵、林さんの日本語によって産まれたメアリー・ポピンズは、架空の人物ではありますが、確実に幼少期の私のナニー(乳母兼家庭教師)として生きていて、今も心の中に存在しています。

ちなみに、映画の「メリー・ポピンズ」はキャラクターとしてはまったくの別ものと考えています。
私は小説のメアリー・ポピンズで育ったので、映画版のにこやかで明るくて優しいメリー・ポピンズではなく、厳格で、きどっていて、不機嫌そうで、うぬぼれやで、おそろしくきつい目でものごとをぴしゃりと言ってのける、原作のメアリー・ポピンズが大好きなのです。

すぐ近くにセント・メアリー・ル・ストランド教会もあります。
その向かいには、キングス・カレッジ・ロンドンのストランド・キャンパスと、芸術や教育系の建物サマセット・ハウスがあります。
キングス・カレッジのキャンパス・ショップで大学のロゴ入りTシャツを購入し(大学に来たら必ず大学のロゴ入りTシャツを買ってしまう性分です)、カレッジの最上階にあるパブで食事をします。
まだ昼間なのでエールは飲みません。
サマセット・ハウスの中にあるコートールド美術館で絵画を鑑賞します。

キングス・カレッジの裏手に謎の遺跡がありました。
ストランド・レイン浴場遺跡「ローマン」・バスなるものです。
実際にはローマ時代に造られたわけではないようですが。
ディケンズの小説『デイヴィッド・コパフィールド』でこの浴場のことが言及されていると聞いたので、家に帰ったら本を確認しなければ。
※チャールズ・ディケンズ著、中野好夫訳『デイヴィッド・コパフィールド』新潮社、1967年

『デイヴィッド・コパフィールド』は何度も映画化されていますが、ジョージ・キューカー監督の「孤児ダビド物語」(1935年)がもっとも好みです。
ところでなぜ邦題はデイヴィッドやデビッドでなく、ダビドなのでしょうね。


王立裁判所


キングス・カレッジ・ロンドン


サマセット・ハウス


ストランド・レイン浴場遺跡への道

コヴェント・ガーデン方面に戻ります。
ロンドン映画博物館で「ボンド ・イン・ モーション(BOND IN MOTION)」という企画展をしていました。
ボンドカーをはじめ、歴代の「007」映画に登場する乗り物やボンドグッズを観覧します。

ジェームズ・ボンドといえば、私は断然ショーン・コネリー派ということになるのでしょう(「派」、というほどのことはないのですが、そもそもショーン・コネリーが好きなのです)。
コネリー以外のボンド映画はほとんど観てきていないのですが、原作の小説の方はよく親しんできました。
原作ファンからすると、ロジャー・ムーアのボンドは少々色っぽすぎるように思えるのです。ロジャー・ムーアも好きなんですけどね。
映画化された長編が有名ですが、ボンドの短編集もなかなか好みです。
※イアン・フレミング著、井上一夫訳『007 薔薇と拳銃』東京創元社、2007年
※イアン・フレミング著、井上一夫訳『オクトパシー』早川書房、1983年

フレミングの他に、サマセット・モームやジョン・ル・カレやグレアム・グリーンも好んで読んでいました。
この流れに関係ありませんが、私はモームと誕生日が一緒です。90歳くらい歳下ですけど。
※サマセット・モーム著、河野一郎訳『アシェンデン―英国秘密情報部員の手記』筑摩書房、1994年
※ジョン・ル・カレ著、宇野利泰訳『寒い国から帰ってきたスパイ』早川書房、1978年

フレミングもモームもル・カレもグリーンも、皆さんイギリスの諜報員だったんですね。
元スパイの作家だから読みたい、と思って読んだわけではないのですが、ローティーン頃の私はスパイの活動に興味があったようです。
あっ、ローティーンどころか。
ちいさい頃にすでに、サンスターの「スパイ手帳」というスパイグッズを所持していました。
水に溶ける紙で秘密の通信文を書く、のようなやつです(いったい誰に宛てるのか)。
そういうわけで、イギリスのスパイに憧れましたし、イギリスのスパイ小説を愛読しましたし、イギリスのスパイになりたいときっと思っていました(いろんな意味で無理です)。

グレアム・グリーンについては全集を揃えていますが(早川書房『グレアム・グリーン全集』全25巻)、その中では『ブライトン・ロック』、『ヒューマン・ファクター』、『叔母との旅』が好みです。
『第三の男』と『落ちた偶像』も収録されていますが、この2作はキャロル・リード監督の映画版がいいと思っています。
※グレアム・グリーン著、丸谷才一訳『ブライトン・ロック』早川書房、1979年
※グレアム・グリーン著、宇野利泰訳『ヒューマン・ファクター』早川書房、1983年
※グレアム・グリーン著、小倉多加志訳『叔母との旅』早川書房、1981年

イギリスの冒険小説といえば、他に、ギャビン・ライアルを外すことはできません。
『深夜プラス1』がおそらくもっとも有名で、多くのミステリ・ファンから絶賛されています。
私自身も子どもの頃に読んで、その面白さに相当興奮したことを覚えています。
最近のことですが、東大法学部の和仁陽先生とお話をした際に、先生もこの小説を大変評価されていると伺い、嬉しく思いました。
それがきっかけで、先生からライアルの原書をお借りしたりもしました。
※ギャビン・ライアル著、菊池光訳『深夜プラス1』早川書房、1976年
※ギャビン・ライアル著、松谷健二訳『ちがった空』早川書房、1976年

そういえば、「深夜プラス1」というミステリ系が充実していた小さな書店がかつて飯田橋にありました。
深夜によく通って、本を買って帰って朝まで読んでいました。
思い出の本屋さんです。
六本木の青山ブックセンターもそうですが、通い続けた本屋さんが(特に、深夜に通えるというワクワク感を味わせてくれた本屋さんが)閉じられていくのは切ないものがありますね。

はなはだしい脱線をしました。ロンドンに戻ります。

ロンドン交通博物館に行くと、ちょうど閉館するところでした。
ショップはまだ開いていたので、せめて来訪の記念にとロンドンの地下鉄グッズを買いました。

暗くなりました。
また10分程度歩いてデューク・オブ・ヨーク劇場に行きます。
テネシー・ウィリアムズ原作の舞台「ガラスの動物園」(The Glass Menagerie)を観劇して感激します。

コヴェント・ガーデンからセブン・ダイアルズ交差点を通ってホテルに戻ります。
ここは七叉路になっていて、6つの日時計をもつ大きな柱を中心にして7本の小道が放射状に伸びています。
日時計は6つなのにどうして名前はセブンなのだと不思議に思っていましたが、後で調べたところ、柱自体も日時計になっているんですね。

これも子どもの頃に愛読していた、アガサ・クリスティのミステリのタイトルを想起して、セブン・ダイアルズ交差点を通るときにひそかに興奮していました。
でも、それは思い違いで、小説に出てくる「セブン・ダイヤルズ」はどうもこの場所のことではなかったようです。
※アガサ・クリスティ著、中村能三訳『七つのダイヤル』東京創元社、1963年
※アガサ・クリスティー著、深町眞理子訳『七つの時計』早川書房、2004年

クリスティ原作の舞台「ねずみとり」(The Mousetrap)がロングラン上演されているセント・マーティンズ劇場がこのセブン・ダイアルズのすぐ手前にあります。
そこを通って行ったので、セブン・ダイアルズ交差点に差しかかる前から私の頭はクリスティでいっぱいになっていたのでした。
なお、舞台「ねずみとり」は前回ロンドンに来たときに観劇して感激したので、今回は行っていません。時間があれば二度三度と観たかった公演なのですが……。
※アガサ・クリスティー著、鳴海四郎訳『ねずみとり』早川書房、2004年

今日はすべて徒歩で移動したので健脚になりました。


コヴェント・ガーデン


デューク・オブ・ヨーク劇場


セブン・ダイアルズ


セント・マーティンズ劇場

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ロンドン滞在記 〜 2日目 〜

バスで約1時間強、イングランド南東部のケント州カンタベリーに行きます。
イングランドの王妃たちが暮らしたリーズ城を見学します。
ここは、世界で最もラブリーな城と言われているのだとガイドさんに教えていただきました。

ロンドン市内よりも相当寒いところでした。
しかも、雨が降っていたのでさらに冷えるのです。
はおる服が足りなくなったので、ホテルから持ってきていた新聞 The Daily Telegraph をこっそり服の下に巻きました。
以後、リーズ城内を歩く/動くたびにしゃわしゃわ、しゃわ、と音がする人になってしまい、無用に人々の注目を集めることになります。
でも風邪をひくよりはずっとましです。

そこからまたバスで数十分。カンタベリー大聖堂を訪れます。
ここも世界遺産なんですね。
受験で世界史を取らなかった私では、カンタベリー大聖堂を見学できるなんてちょっと豚に真珠的な感じで、きっと世界史の知識がある人ならもっともっと感じるものがあったのかもしれません。
しかし荘厳でした。ステンドグラスも圧巻です。

外に出て、カンタベリー・ストリートにあるお店でマフラーを買いました。

さらに海側に向かい、ドーバー海峡に着きました。
海峡に面した白亜の崖(ホワイト・クリフ)が有名です。


リーズ城


カンタベリー大聖堂


ドーバー海峡

なのですが、私にとってはドーバー海峡は白亜の崖というより圧倒的にクロフツです。
子どもの頃、熱狂的に愛読していた『ジュニア版世界の名作推理全集』(秋田書店)に、クロフツの『ドーバー海峡の怪奇』が収録されていたのです。
※F. W. クロフツ著、藤原宰太郎訳『ドーバー海峡の怪奇』秋田書店、1983年
※F. W. クロフツ著、井上勇訳『英仏海峡の謎』東京創元社、1960年

遡ると、最初に読んだクロフツは、小学生のときに出会った『少年少女世界推理文学全集』(あかね書房)に入っていた『マギル卿さいごの旅』と『チェーンの秘密』でした。
あかね書房のこの全集は、秀逸なセレクションと翻訳と装丁で、少年少女を推理小説の世界に導き入れる一大偉業を成し遂げたと思っています。
(1963年初版という時代を考えると、「少年」世界推理文学全集とせず「少年少女」としているところにも個人的に大変好感がもてます。)
※F. W. クロフツ著、内田庶訳『マギル卿さいごの旅・チェーンの秘密』あかね書店、1980年
※F. W. クロフツ著、橋本福夫訳『マギル卿最後の旅』東京創元社、2002年
※F. W. クロフツ著、井上勇訳『フレンチ警部とチェインの謎』東京創元社、1971年

その後は、創元推理文庫に入っていたジュニア版でないクロフツ作品をすべて読んでいきました。
30代の頃にクロフツ熱が再燃して、原書のクロフツで入手できるものをすべて輸入したこともあります。

あかね書房からは、その後、『少年少女世界SF文学全集』も刊行されています。
これがまたすばらしいセレクションで、小学生の私はSF沼にもまんまと落ちました。
中でも、シェクリーの『不死販売株式会社』を読んだときの衝撃は忘れられません。
大人になってからどうしても再読したくなって、(邦訳は絶版だったので)ペーパーバックを探し求めました(その後、文庫版で邦訳が出ました)。
※ロバート・シェクリー著、福島正実訳『不死販売株式会社』あかね書房、1981年
※Robert Sheckley. Immortality Inc.: Bantam Book, 1978.
※ロバート・シェクリイ著、福島正実訳『不死販売株式会社―フリージャック』早川書房、1992年

どう考えてもSFカテゴリだろうと思われるのになぜか『少年少女世界推理文学全集』の方に入っている、ベリヤーエフの『生きている首』も衝撃でした。
原書はロシア語なので私には読めませんが、幸いなことに邦訳の文庫を今も持っています。
※アシモフ著/ベリヤーエフ著、福島正実訳『暗黒星雲/生きている首』あかね書房、1965年
※アレクサンドル・ベリャーエフ著、原卓也訳『ドウエル教授の首』東京創元社、1969年

私のミステリおたく傾向は、『少年少女世界推理文学全集』によって始まり、『少年少女世界SF文学全集』によってSFに広がり、『ジュニア版世界の名作推理全集』によってさらに拡充されました。
当時は宝物のように保管して、1巻ずつ取り出してはめくり、読み、想像し、興奮し、を繰り返していました。
今も持っていられればよかったと思う蔵書でした。

旅の文章より脱線の方が長いとはこれいかに。
河港のグリニッジに移動します。
旧王立海軍大学王立天文台をまわり、帆船カティサーク国立海事博物館のあるグリニッジ桟橋から高速フェリーに乗ります。テムズ川のクルーズです。
セントポール大聖堂、タワー・ブリッジ、ロンドン・ブリッジ、ロンドン塔、ロンドン・アイなどが見られます。
これらは前回ロンドンに来たときにじっくり見ているので、船の中から懐かしく眺めていました。

1時間弱でウエストミンスター橋に着きます。
国会議事堂の向かい側の歩道に立ち、「ビッグ・ベン」の時計をしばらく見上げていました。
時計好きとしては、ビッグ・ベンは家に持って帰りたいくらいの魅力があります(いろんな意味で無理です)。
正式名称は「エリザベス・タワー」というのですね。

せっかくドーバー海峡に行ったのですから、夕食はイギリスの名物であるドーバーソール(舌平目)のムニエルを食すべきだったのかもしれませんが、前回の旅で食していたこともあり、今夜は日和って(ひよって、ということでもないけど)韓国料理を食しました。
そういえば、ドーバーソールを最初に知ったのもメアリー・ポピンズの本でした(本では「ドーヴァ・カレイ」と訳されています)。
※P. L. トラヴァース著、林容吉訳『風にのってきたメアリー・ポピンズ 帰ってきたメアリー・ポピンズ』岩波書店、1963年


帆船カティサーク


国会議事堂とビッグ・ベン

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ロンドン滞在記 〜 3日目 〜

今日はまず、ロンドンの中心地であるシティ・オブ・ロンドンに向かいます。
地下鉄テンプル駅で降りました。
すぐ近くに、テンプルと呼ばれる法曹界の区域があります。

駅前で、界隈の案内をお願いしていた現地の弁護士さんと合流します。
日本から来た法学生だと話すと、それはぜひ、このエリアをいろいろと見ていってほしいとおっしゃいます。
日本とイギリスの法律の比較などを話しながらテムズ川沿いを歩き、テンプル地区に入ります。
おととい行った王立裁判所もこのすぐ近くです。

映画「ダ・ヴィンチ・コード」でも有名な、イングランド国教会のテンプル教会を見学します。
1215年に制定されたイギリス最古の憲法典「マグナ・カルタ(大憲章という意味です)」のコピーが展示してありました。
自由と人権という概念の起源であると言われるこのマグナ・カルタ、今も一部は現行法なのだそうです。

教会の上階で写真展をやっていました。
この写真群に大変興味をもったので、展示会のブックレットなどがあれば購入したいのですがとスタッフの方に尋ねたのですが、(当時は)ないということでした。
さらに粘って、もし今後これらの写真が載った本などが出版されるようなことがあったら教えていただけないかとお願いして、メールアドレスを記してきました。
われながら図々しいというか、こういうところには押しが強いのです。
でも、後でよく考えたら、テンプル教会は写真展の会場だっただけで、私が尋ねた相手も教会のスタッフさんだったので、写真集の存在について知らせてくださいなどとお願いするのはずいぶんと筋違いなことだったかもしれません。
※写真展のタイトルは「Of Things Not Seen: A Year in the Life of a London Priest」。写真家Jim Groverさんが、南ロンドンにあるイングランド国教会の、ある司祭の一年を撮ったものです。帰国してからウェブサイトを見つけました。
http://www.ofthingsnotseen.com

フィリップ・グレーニング監督「大いなる沈黙へ グランド・シャルトルーズ修道院」(Into Great Silence)という映画があります。
あるフランスの修道院に生きる修道士たちを撮影したドキュメンタリー作品です。
ドキュメンタリーといっても、BGMもナレーションもありません。

この作品がとても好きで、何度でも観てしまいます。
トータルで3時間くらいあるのですけどね。
何度観ても惹かれますし、落ち着きます。
作品にあやかって、自分の心がけまで良くなった気すらします。
私が持っているDVDはドイツ語版ですが(なぜ)、日本語版も出ています。

テンプル教会の周りに建つインズ・オブ・コートを見て回ります。
インズ・オブ・コートは法廷弁護士の組織で、4つの法曹学院(ミドル・テンプル、インナー・テンプル、リンカーン、グレイ)から成っています。


テンプル教会


インズ・オブ・コートの中庭

ふたたび王立裁判所に入ります。
今日は弁護士さんによる詳しい解説つきなので、おととい来たときよりもさらに楽しめました(裁判所に対して「楽しめる」という言い方は不適切かもしれませんが)。

弁護士さんと別れてテンプル駅に戻ります。
途中で紅茶専門店トワイニング(TWININGS)本店に立ち寄り、買い物をします。
英国王室御用達の店です。

さらに、駅に行く道の途中にあるトゥー・テンプル・プレイス美術館に入ります。
この建物の中は展示会が開催される期間のみ一般公開されるので、普段は入れないのですが、ちょうどこの日は展示会期でした。
ラッキーです。

ギャラリーと建物を見学した後、テンプル駅から地下鉄に乗り、ベイカー・ストリート駅で下車します。
駅名そのままですね、この近所にシャーロック・ホームズ博物館があるのです。
シャーロッキアンの末席に連なる者(と自分で言っても許されるならば、ですが)として、ロンドンに来ておいてここを訪問しないわけにはいきません。

子どもの頃は創元推理文庫の阿部知二さん翻訳版を、大人になってからは小池滋さん翻訳の詳注版を主に読み込んでいました。
たまに『シャーロック・ホームズ大百科事典』も眺めました。
近年刊行された河出書房新社と偕成社の全集も気になるところです。
挿画は、「ストランド・マガジン」連載時のシドニー・パジェットによるイラストが、やはりいいですね。
※コナン・ドイル著、阿部知二訳『シャーロック・ホームズの冒険』東京創元社、1960年
※コナン・ドイル著、小池滋訳『詳注版 シャーロック・ホームズ全集』筑摩書房、1997-1998年
※ジャック・トレイシー著、日暮雅通 訳『シャーロック・ホームズ大百科事典』河出書房新社、2002年
※アーサー・コナン・ドイル著、小林司/東山あかね訳『シャーロック・ホームズ全集』河出書房新社、2014年
※コナン・ドイル著、各務三郎訳『完訳版 シャーロック・ホームズ全集』偕成社、2003年

ベイカー・ストリート駅に戻り、ジュビリー線でロンドン北西部のフィンチリー・ロード駅まで行きます。
目的地は、駅から徒歩で10分ほどのところにある高級住宅地ハムステッドにあります。
レンガ造りの家が建ち並ぶ住宅地に入ったところで、道が分からなくなってしばらくうろうろしましたが、無事に見つけました。
フロイト博物館です。
精神分析学の始祖ジークムント・フロイトが最晩年を過ごした家です。
外観は高級住宅地の中の一軒の家にしか見えないので、通り過ぎてしまっていました。

2階に上がる階段の踊り場にフロイトの著作の各国語翻訳書が並べられていて、その中に、戦前に出た日本語の全集もありました。
※フロイド著、大槻憲二/對馬完治/長谷川誠也/矢部八重吉訳『フロイド精神分析学全集』春陽堂書店、1929年

それを見たとき、フロイトの全集(日本教文社『フロイド選集』全17巻)がほしくてたまらなかった子どもの頃の記憶が一瞬で甦ってきました。
まあ子どもなので当然、買えません。
周りの大人に「フロイトの精神分析の全集がほしい」と言っても相手にしてもらえません。
そもそも、読めるんかおまえ、という感じですね。
それでも、7巻目の『藝術論』だけをなんとか自力で購入しました。
当時の私には手が震えるような価格でした。
※フロイド著、高橋義孝/池田紘一訳『改訂版フロイド選集 第7巻 藝術論』日本教文社、1970年

ミステリやサスペンスやSFやハードボイルド小説に浸っていた子ども時代でしたが、一時は、どんな小説よりも『フロイド選集』(全17巻)がほしかったのです。
なにをもってそんなにほしくなっていたのか、そのきっかけなどは覚えていませんが、装丁やタイトルの字体や表紙のデザインや本の大きさや手に持ったときのハードカバーの感触(書店に行くたびにフロイド選集の棚に行って手に取り、ほしいほしいほしいほしいと思いながらひとしきり眺めては棚に戻していました)が大変に好ましく思えていたのです。
そのときから、大人になったら必ず『フロイド選集』(全17巻。藝術論も買い直す!)を揃えるのだと思って生きてきました。
いわゆる、「大人買い」ですね。

私は大人になりました。
あるとき、ついに『フロイド選集』(全17巻)を買う日が来たことを悟り、持ち帰り用に空の大きなバッグを用意して大型書店に出向きました。
『フロイド選集』(全17巻)は絶版になっていました。
※現在はオンデマンド版で購入できるようですね。ただ、装丁が当時と異なるのです。元本のあの装丁がいいのに……。でもオンデマンド版が出たのはありがたいことですね。

フロイト博物館の2階には、サルバドール・ダリによるフロイトの肖像画や、マリリン・モンローの写真が飾られていました。
モンローは、フロイトの娘アンナ・フロイトの患者だったのですね。
2018年には、ここでモンロー映画の上映展が行われたそうです。
私、モンロー大好きなのでここでまた少し脱線しますが(そもそもこの記事自体が「東大Days」からの脱線ですねすみません)、何かで見た、本棚の前に立ってイプセンの『民衆の敵』(An Enemy of the People)という本を読んでいるモンローの写真にとても惹かれています。
映画では、「ノックは無用」、「ナイアガラ」、「バス停留所」を特に好ましく思います。

フロイト博物館のミュージアム・ショップでDVDを買いました。
アンナ・フロイトによるコメンタリー付きです。
※Sigmund Freud Home Movies, 1930-39

通りを挟んで反対側にあるアンナ・フロイト・センターの外観を眺めてから次の目的地に向かいます(アンナ・フロイト・センターは小児の精神療法についての研究機関で、一般には公開されていないのです)。


フロイト博物館


アンナ・フロイト・センター

フロイト博物館から歩いて10分足らずでタビストック・クリニックに着きました。
クリニックといっても、巨大な建物です。
ここは、イギリスの精神病理学や心理療法の分野における中心的な研究所です。
クリニックの前にフロイトの銅像が建っていました。

以前、子どもの精神分析に興味をもち、何冊かの面白い本を読んだことがありました。
その後、東大に入ってから丹野義彦先生の「心理II」という講義を受けたことで興味がさらにつのり、今回のロンドン旅行で訪問地を決めるにあたっては、先生のご著書『ロンドン こころの臨床ツアー』を大いに参考にしました。
タビストック・クリニックも、この本に紹介されていた機関です。
※J. D. コール/E. ギャレンソン/R. L. タイソン編、小此木啓吾監訳『乳幼児精神医学』岩崎学術出版、1988年
※メラニー・クライン著、小此木啓吾/衣笠隆幸/岩崎徹也訳『児童の精神分析』誠信書房、1997年
※丹野義彦著『ロンドン こころの臨床ツアー』星和書店、2008年

フィンチリー・ロード駅に戻り、駅前にあるカルナック書店に立ち寄ってみます。
精神分析や心理療法に関する専門書を扱う書店です。
レジの前のワゴンに積まれていた本の中に日本語の本が一冊あったのが目に飛び込んできました。
これは買ってしまいますね。
タビストック・クリニック訪問記念買いです。
※平井正三著『子どもの精神分析的心理療法の経験―タビストック・クリニックの訓練』金剛出版、2009年

またジュビリー線に乗り、チャリング・クロス駅で下車します。
トラファルガー広場に面したナショナル・ギャラリーに入り、ヨーロッパ絵画のコレクションを鑑賞します。
フレデリック・ワイズマン監督の「ナショナル・ギャラリー 英国の至宝」という好きなドキュメンタリー映画がありますが、当たり前ながら、やはりこの目で実際に観るのがいちばんいいですね。
※インタビューVol.11参照

夜は、ナショナル・ギャラリー近くのトラファルガー・スタジオで、サム・シェパード原作の舞台「埋められた子供」(Buried Child)を観劇して感激します。
終演後はパブで一杯エールをあおり(ロンドンで舞台を観た後にこれをするのが憧れでした!)、地下鉄でホテルに帰ります。

今日も朝から歩きまくってさらに健脚になりました。
明日もロンドンを探索します。


タビストック・クリニック


カルナック書店


トラファルガー広場とナショナル・ギャラリー

次回は、ロンドン滞在記のつづき! はたして東大のお話に戻れるのか?! 7月13日(月)頃更新予定。

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